アマリリス(薔薇色)/程好い美しさ
――薔薇色のアマリリスは“程よい美しさ”。あなたには、似合わないわね――
花屋の店先で揺れる花々を見てふと目にとめたアマリリスを見たとき、女の言葉を思い出した。
そしてその記憶につられるように相棒のことを想う。
彼の恋人がなくなった俳優に似ているとか評したように、奴の容姿は良い。
上の下といったところだろうか。
背格好も少々身長に対して軽すぎるきらいはあるが欠点となるようなものではなく。
道を歩いて二度見されるようなことはなくとも、女子高生があとから少し騒いだりすることもある。
―今の人結構かっこよくない―
―思った。しゅっとしてていい感じ―
―そうかな、あたしあんまりすきじゃないかも―
―えーでもやっぱかっこよかったって―
親しみやすいのだろうか、声をかける人間も多い。
そして自然な流れとして、先日の不愉快な出来事に行き当たった。
最近、奴に良からぬ視線を向ける者どもが多い。
そのまなざしを言葉にすると、「こいつならどうにかなるかも」だ。
事務所に入ってきてギギナに目を奪われその高嶺の花っぷりに若干気落ちした後に待っているのが、ガユスの依頼人向けさわやかスマイルである。
無表情なギギナと違い、にこやかに接してくるガユスは大分とっつきやすく、恋のターゲットにするには上々の容姿。
とうとう先日ガユスに対し「この後食事でもどうですか」と誘いをかける男が出たのだ。
ガユスが色よい返事を返す前に睨みつけて取り消させたが、それからずっと非常に不愉快なまま1日を過ごす羽目になった。
本人に飼われている自覚がないようだが、周りも奴に主人がいることが理解できないらしい。
「首輪、いや腕や足、耳も捨てがたいな・・・」
周囲の視線を引き付けながら歩く男の腕にはアマリリスの花束が抱かれていた。