ライラック/若き日の思い出


もう10年も前のことなのか。

月日が過ぎていくスピードは、年をとればとるほど早くなるという。
この10年、あっという間に、矢のごとく過ぎていった。

つらつらと思いながら買い物を進める。
久々に帰ってくる奴は腹をすかせているだろうから、大量に買い込まなければならない。
肉食動物は肉が主食だが、肉だけでは偏るし、作っていて茶色ばかりで楽しくないので野菜も購入する。
第一この年になると肉だけの食卓はもたれる。

もともと咒式士としてはあまり食べる方ではなかったが、今では普通の成人男性と同程度しか一回の食事では食べられない。
体が持たないので何回かに分けて量を食べるように工夫はしているが。

根菜類を大量に買い込み、葉物野菜の高さにため息をつきながら、少しでも安くあがるように店の親父と交渉する。
正直持てなくはないが持ちたくない重さになった袋を持ち上げ、車に運ぶ。

これ以上痩せるなとことあるごとにいわれるので、一応努力はしたが、やつの行く前より3kgは減っている。
抱き心地がどーのこーのとうるさいのでうっとうしいなあとは思うが、もとはといえばよく食べる奴が目の前にいないと食欲がわかないせいなのであいつが悪い。
一か月もかかるような討伐隊に行くのが悪い。誰が何と言おうと悪い。


ともに暮らし始めて10年、くっついたり離れたり、事務所がつぶれかけたり、死にかけたり、殺し合ったり、殺されかけたり、閉じ込められたり、意識不明に陥ったり、よくわからない事件に巻き込まれたりと落ち着いた生活を渇望する波乱万丈な日々だった。
しかしながら10年もたてばまあ、案外いいように落ち着くものだ。

自宅までの道のりを、いい加減買い換えるべきだと全身に訴えかけてくる車の振動に耐えながら進んでいく。


まさかいないと落ち着かない様になるとはね。

「あの頃は若かったな」
つぶやいてまるでじじいの台詞だとおもい、次いでじじいまではいかないが世間一般的にはおっさんに分類される自分の年齢を思い出してちょっとへこんだ。
どよんした気分で車を降りて、難儀な重さの荷物をとりだして抱えあげようとしてふらついた。

「何をしている」
低い声とともに腰に太い腕が巻きついてくる。背中には硬い胸板の感触。

「あれ、もう戻ってたのか」
「また痩せているではないか。あれほどきちんと食べろと言っていたのに」
「お前がいないのが悪い」
「・・・悪かった」
「1ヶ月もいなくなりやがって」


まるで夫婦のような台詞だ、ちょっと笑える。

昔では考えられなかった穏やかな空気にのせられ、自然と笑顔が浮かんだ。


「おかえり」
「ああ」






なんかちょっと違うかも?
10年後の彼らはエリダナ最強のコンビであるとともにどんな時でもイチャついてる最強のばかっぷる。

だと私がうれしいっていう願望。

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