ヒヤシンス(紫)/私は悲しい


後悔、していないといえば嘘になるのかしら。
自分の気持ちにウソはついていないし、間違ってもいないと思うわ。

それでも惜しい、いえ、悲しいというべきかしら。
そういう気持ちになることがあるのよ。

あの人がそばにいるとき、私の気持ちは振り子のようだった。心の底から愛していたり、どうしても信じることができなかったり。
心からいつくしむことができたときもあるけれど、どうしても許せなかったこともある。

真新しいあの子の墓碑のまえに花をささげたとき、振り子は「許せない」の方向に振りきれてしまって、元の場所に振り戻ることもくるりと回ることもできなかった。

少し感傷に浸ると、どうしようもなく悲しい気持ちになることがある。
そうね、やっぱりこの気持ちには「悲しい」がいちばんしっくりくるわ。
信じさせてくれなかったあの人のことを思うと悲しくなる。


そしてそれ以上に、信じることができなかった自分を思い返してはため息がでるの。





ぽつぽつと語る彼女の表情は乾いていて、川辺に揺れるヒヤシンスの紫をずっと眺めていた。


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